<ヘッドフォン祭>Astell&Kernの新世代「PD10」発表/ブリスオーディオからリファレンスポタアン「WATATSUMI」
フジヤエービックが主催する、約80のポータブルオーディオ関連ブランドが集う展示会イベント「春のヘッドフォン祭 2025」が、本日4月26日(土)に東京駅そばのステーションコンファレンス東京にて開催された。本稿では、Astell&Kernの新DAPや、他のオーディオブランドとコラボレーションしたAZLAのイヤホンなどを展示したアユート、新開発のリファレンスポータブルアンプやサブブランドのケーブルを公開したブリスオーディオの出展模様をお伝えする。
Astell&Kernの次世代DAP「PD10」登場
アユートは同社が取り扱うAstell&Kernから、DAPの新モデルとして登場した「PD10」を国内初公開した。日本では5月に発売できる見込みで、価格はおよそ44万円程度になるという。

実は今年からAstell&Kernブランドの親会社が交代しており、PD10は新しい体制の下で開発された最初の製品とのこと。それに伴ってか既存のラインナップとは異なる新しい取り組みも行われており、例えばデザイン面では従来モデルでおなじみのボリュームノブが無くなり、代わりにボタン操作のロックキーが搭載されている。


音質面でのトピックは、世界初採用というAKM製DACチップ「AK4498EX」のクアッド構成。現行のフラグシップモデル「A&ultima SP3000」が採用している「AK4499EX」の流れを汲んだ電圧出力DACチップで、デジタル処理専門チップの「AK4191」と組み合わせることでデジタル/アナログのノイズ干渉を大きく抑える設計だ。
SP3000では、4基のAK4499EXと2基のAK4191を組み合わせてデジタル/アナログ処理を完全分離する「HEXAオーディオ回路構成」を搭載していたが、今回PD10でもAK4498EXで同じ回路構成を実現しているという。
もう一つの注目点が「スマートゲイン機能」。PD10には高インピーダンス用/低インピーダンス用の2種類のアンプ回路を搭載しており、イヤホン/ヘッドホンに最適な方に自動で切り替わるという。一般的なDAPならハイゲイン/ローゲイン設定を手動で切り替えて対応するところだが、PD10ではその手間が省かれるだけでなくインピーダンスに合わせた音質の最適化にも期待できそうだ。
このほか、専用のドッキングクレードルが付属。背面にXLR出力を装備し、据え置きオーディオシステムに組み込んだりすることが可能となっている。

Astell&Kernからは、ULTRASONEとコラボレーションしたヘッドホン「VIRTUOSO」(予価14万円前後)も出展。以前のイベントに参考出展してからイヤーパッドを改良し、いよいよ発売する見込みとのこと。
VIRTUOSOはULTRASONEのモニターヘッドホン「Signature MASTER MkII」をベースに、アルミニウム製ハウジングや新チューニングを採用。40mmチタンメッキマイラードライバーや「S-Logic 3」、「DDF(Double Deflector Fin)」といったULTRASONE独自技術を受け継ぎつつ、新たにバランス接続への対応を行っている。

AZLAブランドからは、他ブランドとのコラボレーションで開発したイヤホンが登場。すでに発表済みの「ERINYS II(エリネス・ツー)」に加え、「LE CELADON(ル・セラドン)」「NOIR BLANC(ノワールブラン)」という未発表の参考出展を含む合計3モデルが展示されていた。
ERINYS IIはqdcとコラボレーションしたゲーミングモデル。BAドライバー 1基とダイナミックドライバー 1基の2ドライバーハイブリッドであり、FPSゲームで音の情報を捉えやすい空間表現力と解像度に力を入れているという。参考出展のLE CELADONもqdcとのコラボモデル。こちらはダイナミックドライバー1基のみのシングル構成で、ボーカル表現に注力したモデルとなる。


NOIR BLANCは中国TANGZUブランドとのコラボで、楽器をナチュラルに再現するという3BA/1ダイナミックのハイブリッド型。デザインは黒一色の上品な質感にまとめられている。

qdcでは、3月28日から発売中のエントリークラスのカスタムIEM「DEBUT」試聴機を展開。ダイナミックドライバー1基を搭載し、音楽制作でのサウンドチェックのような分析的な聴き方に適した「DEBUT-CS」、ステージ上でリズムや音程をモニターするような用途に向いた「DEBUT-CL」という2つのチューニングを用意している。5.5万円という価格は耳型を採って作るカスタムIEMとしては手頃で、まさに “デビュー” にうってつけといえるだろう。


そして検討中のブランドとして、Noble Audioの製品が展開された。名前の通り、日本の大鎧や日本刀の柄にちなんだ装飾が立体的に施された1ダイナミック/6BA/2BC(骨伝導)/4EST(静電トゥイーター)モデル「Shogun」などをデモンストレーションしていた。

ブリスオーディオのポタアン「WATATSUMI」堂々お披露目
ブリスオーディオでは、新たなリファレンスポータブルアンプとして開発した「WATATSUMI」(68万円前後)を、同じく新開発のショートケーブル「OROCHI-MINI Ultimate」と合わせて展示した。

昨日正式発表されたWATATSUMIは、これまでに開発したポータブルアンプの知見もふんだんに盛り込み、同社のケーブル開発の新しいリファレンス機材として誕生したモデル。純粋なアナログ・バランス入出力設計、物量や純銀導体をおごったアナログ回路/電源など、創業10周年の節目を飾るのにふさわしい作り込まれた製品となっている。

OROCHI MINI Ultimateは、このWATATSUMIとプレーヤーの接続に適したショートケーブルで、新しい素材や高音質加工を投入したハイエンドモデル。プラグも今回新規開発したとのことだ。両端が4.4mmバランス、または3.5mmシングルエンドのモデルが20万円で後日発売予定。ソニーのウォークマンなど4.4mm端子にGNDが未結線のプレーヤーと繋ぐための4.4mm+3.5mmプラグ仕様のモデルも25万円で展開予定としている。

また、サブブランドとして立ち上げる「BriseWorks」から、第1弾製品「MIKAGE」を初公開。受注生産のためユーザーの手元に届くまでどうしても時間がかかってしまうブリスオーディオブランドに対し、サブブランドでは量販店などですぐ手に入る製品を展開していくという。

量産品とはいえ、MIKAGEには高機能高純度銅導体や「Spiral77」ケーブル構造などブリスオーディオのケーブルと同じものを採用。クオリティをたかめつつ、相性の悪い音楽ジャンルや機器のあまりない、組み合わせを選ばない音質傾向に仕上がっているとのこと。価格は約1.9万円で6月ごろに登場予定だそうだ。