<NHK技研公開>独自開発LLMを活用した番組制作サポート/フェイク動画を防ぐ改ざん来歴情報提示機能
NHK技研研究所は、放送技術に関する研究成果を一般公開する「技研公開2025」を、5月29日から6月1日まで開催する。本稿では、一般公開に先立ちメディア向けに開催された先行体験会から、展示内容を紹介していく。

“広がる・つながる・夢中にさせる” をコンセプトとする「技研公開2025」。「メディアを支える」カテゴリーでは、番組制作の効率化を目指して独自に開発した「大規模言語モデル(LLM)」を基に、番組制作者をサポートするアプリケーションを紹介している。
このLLMは、NHKが放送したニュースをはじめ、研究論文、番組翻訳、NHKホームページの内容といった放送局データを重点的に学習させて構築したもの。放送局で頻繁に使用する言語や表現も含めて情報を学習しているため、放送局業務に適した文章生成が可能であることが大きなメリットとして挙げられる。

このLLMを活用したアプリケーションを開発することにより、番組制作時に必要となる翻訳や要約、校閲といった作業面のサポートが可能となるため、番組制作者がよりクリエイティブな作業に集中できる環境を作り出せると解説していた。
ニュースコンテンツの効率的な制作を目指して研究されているのが、「ニュースメタデータ生成システム」を導入した自然言語処理技術。ニュース原稿に対してのメタデータ生成をはじめ、傾向分析、可視化といった面を自動化させることで、少ない作業でコンテンツ提供を可能にするという。

また、近年スマートフォンの普及によって縦型動画のコンテンツが増えていることを受けた、放送用の映像から縦型映像を効率的に作成する「縦型動画自動切り出し技術」をブースで展開している。放送用のニュース映像を縦型動画に自動変換する技術と、縦型動画の編集を簡素化するソフトウェアの2つが紹介されていた。



「ユニバーサルサービス」カテゴリーの展示では、放送とインターネットをデータとアプリケーションで繋ぐことをコンセプトとした「Webベース放送メディア」の研究開発に関連したブースが並んでいた。
放送番組と配信作品の違いを意識しないでスムーズに映像コンテンツを視聴できるシステム「放送通信統合型コンテンツ提供基盤」のブースでは、映像コンテンツを特定のテーマに従ってプレイリストにまとめたり、多様な番組編成を効率的に生成してコンテンツを提供する手法を紹介していた。



併せて、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用する「マルチクラウド」を活用することで耐障害性を高める映像コンテンツ提供の仕組みや、番組編成に応じて必要な機能をリアルタイムで起動する仕組みなども紹介。安定性と高効率を両立したコンテンツ提供の方法を提案している。

「来歴情報提供技術」の展示ブースでは、視聴動画の来歴情報や改ざんの痕跡をリアルタイムで表示する技術を紹介。視聴者は映像の信頼性を判断可能となり、偽情報/誤情報に接触するリスクを低減できる。


近年の映像制作現場では、視聴者から映像素材の提供を受ける機会が増えていることから、膨大な映像素材の出どころや真正性を来歴情報により自動判別する、コンテンツ制作現場向けのシステムも試作している。



本システムは従来提案していたものよりも、来歴情報の視認性が向上。来歴情報のあり/なしだけでなく、カメラ撮影されたものか、それとも生成AIを使用しているものかひと目で確認できる。また放送局のロゴデータのあり/なしを識別できたり、改ざん情報が含まれていることを明確に表示できる機能なども提示していた。


