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【第170回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

お酒好き必見!?マッツ・ミケルセンが飲んで飲んで飲みまくる!“人生”を掛けた実験の結果とは…?

公開日 2025/06/06 06:30 ミヤザキタケル
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サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2020年製作の『アナザーラウンド』をご紹介します! 


『アナザーラウンド』 (2020年・デンマーク/オランダ/スウェーデン)
(配信:Amazon Prime Video / U-NEXT / Hulu)
『アナザーラウンド』
Blu-ray+DVDセット 5,280円(税込)
発売元:クロックワークス
販売元:TCエンタテインメント


 第93回アカデミー賞にて国際長編映画賞を受賞したトマス・ヴィンターベア監督×マッツ・ミケルセン主演の人間ドラマ。冴えない高校教師のマーティン(マッツ・ミケルセン)は、気心知れた同僚たちとある理論を検証する。その理論とは、人間の血中アルコール濃度は0.05%が理想であり、その状態をキープすることで体がリラックスし、力と勇気がみなぎってくるというもの。理論の正当性を検証すべくアルコールを定期的に摂取した状態で、授業や家庭に臨むマーティンと仲間たちであったが……。

(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

 お酒の力を借りて人生をより良き方向へ変えていこうと奮闘する中年男性たちの姿は、さながらコメディ映画の様相を呈し、見ながらきっとお酒が飲みたくなってくる。しかし、そのような理論がこの現実において立証されているわけでもなく、そもそもお酒にトラブルは付き物。初めの内は適度な量のアルコールが功を奏して状況が好転したかのように見える男たちではあるものの、次第に雲行きは怪しくなっていく。そう、何かに依存する形でしか起こり得ない変化では、どのみち限界がやってくる。他力本願ではなく、苦労や努力の末に獲得したものや、自身の内側から生み出されたものにこそ、人生を変え得る程の力が備わるもの。

(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

 気付けばコメディ映画的な空気は鳴りを潜め、シリアスな人間ドラマが展開されていく。その過程において垣間見えるマーティンたちの変化や葛藤にこそ、本作の魅力が詰まっている。物語冒頭、「青春とは?夢である」「愛とは?夢の中のものである」と、哲学者で思想家のキルケゴールの言葉が引用されているのだが、映し出されていくドラマとキルケゴールの言葉を照らし合わせながら見ていくことで導き出される答えがきっとある。お酒との付き合い方を通して、人生について考えるキッカケを与えてくれる良作です。

 

(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
 
ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。

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