オープン型になっても“ブレないサウンド”。ゼンハイザー「ACCENTUM Open」を使ってみた
いまイヤホンの世界では、“ながら聴き” がひとつのトレンドになっていたりして、“耳を完全にふさがないで音楽を楽しむ”という選択肢が広がっている。
そんな中、ドイツの名門ゼンハイザーから登場したのが、“オープン型” を標榜する完全ワイヤレスイヤホン「ACCENTUM Open(アクセンタム・オープン)」だ。1968年に世界初のオープンエア型ヘッドホン「HD 414」を世に送り出した同社が、満を持して完全ワイヤレスでも “オープン” を謳う。

製品としては、イヤーピースの無いいわゆるインナーイヤー型と呼べるもの。周囲の音がある程度聴こえる環境=日常の中に、ゼンハイザーサウンドが溶け込むようなリスニング体験を狙った1台だ。
予想実売価格価格は税込16,940円前後で、同社の製品としてはお手頃で驚く人も多いだろう。しかしカジュアル志向のイヤホンだからと侮るなかれ。サウンドを聴くと、「カジュアルラインでも、ゼンハイザーらしさはブレない」と実感できる注目機だった。
本体もケースもびっくりするほど小さい&軽い
まずは、製品の基本からチェックしていこう。上述の通りスティック型のオープンイヤーで、カラーはブラックとクリームの2色をラインナップ(クリームはAmazonのみの限定販売)。Bluetoothのバージョンは5.3に準拠し、コーデックはSBC/AACに対応している。

内部には11mmのダイナミックドライバーを搭載。詳しい音質については後述するが、チューニングは同社のヒット作である開放型ヘッドホン「HD 650」の設計思想を下敷きにし、80年以上にわたって培った音響技術を結集したとのことで、この価格帯でも抜かりはない。
バッテリー仕様は、イヤホン単体で最大6時間、充電ケースを併用すれば最大28時間の連続再生が可能。10分の充電で約90分再生できる急速充電に対応するのも何気に嬉しい。本体はIPX4の防滴仕様で、多少の雨や汗も気にせず使える。
ACCENTUM Openの実機を手に取ってまず驚くのが、とにかく小さくて軽いこと。「本当に充電できるの……?」と一瞬不安になったくらいだ。
カチャッと軽い手触りのフタを備えた充電ケースの重量は約29.3gで、服のポケットにもすっきり収まる。こうした軽量&コンパクトなデザインも、日常に溶け込むカジュアル感とシンクロする。

イヤホン本体も片方あたり約4gで、これまた軽い。重量を耳甲介へ均等に分散させる独自のステム構造を採用しており、密閉型イヤホンで生じやすい圧迫感や蒸れ、閉塞感を低減している。


筆者の小ぶりな耳にもサクッと引っかけて自然と収まるし、筆者が使った限りは耳から不用意に外れることもなかった。さすがに激しいスポーツ時なんかの使用は不安だが、通勤中やデスクワーク中にサクッと音楽を聴くような使い方ならまず問題ない。お借りしたのはブラックだが、マットな質感で見た目的にも馴染みが良い。

片耳使用にも対応しており、在宅ワークやオンライン会議でも柔軟に使える。内部には、AIノイズリダクションアルゴリズムと4基のマイクによるビームフォーミング機能を採用し、自然な通話がしやすい設計。さらに2台までのデバイスと同時ペアリングできるマルチポイント接続に対応していて、普段からプライベートとビジネスの両方で使いやすい。
説明書いらずで使える、超シンプルな使い勝手
もうひとつ、本機のカジュアル感を高めているのが、とにかくシンプルに割り切った操作性。もちろん取扱説明書は付属するが、これまで他の完全ワイヤレスイヤホンを使ったことがある人なら、説明書を見なくてもすぐ使い始められると思う。
基本操作は、スティック部分をタッチする直感的なコントロールで、再生や一時停止が可能。装着検知によるスマートポーズ機能も搭載する。その一方、スマートフォン向けの専用アプリなどは用意されていない。つまり、アプリからの音質カスタマイズ機能などは潔く省略。オープン型という仕様もあって、アクティブノイズキャンセリング機能も非搭載だ。

箱から出してBluetoothペアリングすればすぐ使い始められて、あとはイヤホンをタッチして操作するだけ。この、使いこなしのコツが一切ないシンプル仕様も、スムーズに日常に溶け込んでくれる要素である。

音質レビュー: “ゼンハイザーらしさ” がブレないサウンド
それでは、気になるサウンドをチェックしていこう。筆者の私物スマートフォン「Google Pixel 8a」と組み合わせて、リアルに日常生活の中で使ってみた。製品の特性上、周囲の環境音がサウンドの聴こえ方に少々影響するが、それも含めて楽しむのが良いと思う。先に言うと、カジュアルな製品でも基本のゼンハイザーらしさはブレないのがさすがだった。
まず静かな空間で使用して、Amazon Music HDで配信中の楽曲を再生し、基本の音質を確認。オープン型ならではの開放的なサウンドで、深みのある低音に広がりが感じられる。やや中〜低域に寄ったチューニングのおかげか、オープン型でも音が周囲の雑音に負けず、それでいて中〜高域の滑らかさもある。個人的には、アコースティックな楽器の音色が非常に心地よく感じた。オーケストラ楽曲なんかを聴くと、チェロやコントラバスなど弦楽器の低音が深く、じんわり沁み込むよう。

今どきのポップスでも、楽器系の音を主体とした楽曲は特に合う。藤井風「真っ白」(48kHz/24bit)は、スローでリラックス感のあるアコースティックギターのサウンドが実によく馴染む。深みのある低音が柔らかくハスキーなボーカルと相性抜群だし、ややジャジーで余白を感じさせるアレンジを開放的な音場が引き立ててくれる。
Ado「わたしに花束」(44.1kHz/16bit)は、バンドサウンドにストリングスとピアノが加わったアップテンポなアレンジが、開放的な空間に華やかに広がって、それを心地よい低音が下支え。Ado特有の鋭いシャウトだけでなく、明るさや優しさを帯びたボーカルニュアンスも生きてくるイメージだ。
低音はキレよくズンズン来るタイプではないので、エッジの効いたEDMアレンジなんかは少々物足りなく感じる人もいるかもしれない。とはいえ、打ち込み系でいうとCreppy Nuts「オトノケ」(48kHz/24bit)は、全体を通して鳴っているジャージークラブのリズムに丸く質感が伴うイメージで、これはこれで好印象。湿度を含んだオカルティックな世界観と調和している。
そんな本機をカフェなどで使うと、「周囲の音をある程度感じる中で、良質なサウンドが聴こえる」という感覚で楽しめる。“音楽に没入する” ではなく、“音楽と共に生活する” とでも言おうか。
さすがに静かな公共施設などでは音量に注意した方が良いが、カフェなど雑音が多い場所なら、音漏れも大して気にせず使えた。あと少し音量を下げ気味にしていれば、本機で音楽を流しながら誰かとちょっとした会話もできる。
いつもの日常にゼンハイザーサウンドが溶け込む
ACCENTUM Openを使う魅力をまとめると、“いつもの日常に高品位なゼンハイザーサウンドが溶け込んでくる” こと。軽量で装着性も良く、手の届きやすい価格でもあるので、カナル型イヤホンが苦手な人も手軽に試しやすいインナーイヤー型だと思う。
何より、TikTokやInstagramのショート動画を軽く観るのにマッチするカジュアルで使い心地重視のイヤホンと思いきや、音楽リスニングでは “ゼンハイザーらしさ” がブレないところが好印象だ。
(提供:Sonova Consumer Hearing Japan)